ASKA CONCERT TOUR 12>>13 ROCKET
ライブレポート
(2013/4/15更新)

これはまさに“ROCKET”みたいなツアー。過去・現在・未来へ、内なる宇宙へ、
ASKAの歌声が観客をどこへでも連れて行く。

文=長谷川 誠(音楽評論家)
写真=西澤 祐介

3時間弱のステージなのに、長い旅をしたような確かな感触が残った。感動と興奮と驚き、そして深い余韻。“ROCKET”というタイトルがぴったりのツアーだった。ロケットに乗ったような加速感を何度も味わった。ライブが始まった瞬間から、一気に歌の世界へと持っていかれる。そして1曲ごとに世界観がガラッと変わっていく。つまりこれはワープ機能をも搭載した“ROCKET”。その推進力エンジンを担っているのはASKAの歌声だ。彼の歌のパワーと表現力の豊かさとを思う存分堪能したツアー。伸びやかでスケールの大きなボーカルが大気圏を越えて、はるか宇宙の彼方へと誘い、そして胸の奥底に潜んでいる小宇宙へと導いていく。開放的であることと内省的であることとが両立していた。

ツアー初日のオリンパスホール八王子もツアーのラストとなる追加公演のNHKホールも曲順、曲目はまったく一緒だった。本編1曲目からアンコールのラストまでトータルでひとつの大きな組曲、もしくはミュージカル。そう言いたくなるくらい、個々の曲が共鳴しあい、連動して、大きな流れを形成している。最新アルバム『SCRAMBLE』収録曲が軸となっていて、彼の現在のベクトルが見えてくるステージであると同時に、ソロ活動の集大成にして到達点のステージ。そもそも『SCRAMBLE』というアルバム自体が一時期の勢いやムードで作った作品ではなくて、約7年間の時間をかけて、じっくり熟成させて丹念に練り上げた作品でもある。このアルバムの根底から感じ取れる俯瞰のまなざしは今回のツアーにも共通するものだろう。

1曲目の『UNI-VERSE』と本編最後の『いろんな人が歌ってきたように』はすべての曲をクリップしていく懐の深さを備えている。哀愁と不思議な高揚感とが共存する『SCRAMBLE』、みずみずしい生命力を備えた『朝をありがとう』、自在な表現力を駆使した歌声が素晴らしい『歌の中には不自由がない』などの最新アルバム収録曲と、壮大な広がりを備えた『Far Away』、会場内に空が広がっていくようだった『けれど空は青~close friend~』など、新旧の楽曲が絶妙に配置されて、呼応しあっている。例えば、『UNI-VERSE』でのペットボトルロケットが飛ぶ青空と『けれど空は青~close friend~』での空とはどこかで繋がっているような気がしてくる。『晴天を誉めるなら夕暮れを待て』と『僕の来た道』の夕暮れがシンクロしていく。それらの歌を結びつけているのはやはりASKAの歌だ。

立体的で人間味あふれるバンドサウンドも見事だった。彼の音楽の盟友とも言うべき澤近泰輔(pf)を始め、鈴川真樹(g)、古川昌義(g)、荻原基文(b)、江口信夫(dr)、クラッシャー木村(Vn)、一木弘行(cho)、藤田真由美(cho)といったメンバー。彼らの歌への理解力の深さが演奏にも表れていた。ジャジーなアレンジに生まれ変わった『Kicks Street』ではASKAとバンドとの絶妙のタイム感、息の合ったアンサンブルに聴き惚れた。1998年発表曲だが、今の時代のどこかの街にある“Kicks Street”が出現。ASKAの弾き語りで披露されたCHAGE and ASKAの初期のナンバー『冬の夜』では1980年代初頭へと時間を遡っていく感覚を味わった。どうやらこの“ROCKET”はタイムトラベルの機能も備えているようだ。昭和の頃、“ROCKET”はピカピカに輝く未来を象徴する言葉だった。2013年の今、この言葉はむしろノスタルジックに響く。時代を超えて届いてきたのは『LOVE SONG』。気持ちのいい空間へ連れて行ってくれた『L&R』は未来への予告編のようでもあった。『バーガーショップで逢いましょう』の明るさがなぜか今の時代に胸に染みてきた。過去、現在、未来が交錯するステージ。本編ラストの『いろんな人が歌ってきたように』で“すべては愛だってことを”というフレーズが歌われた瞬間に鳥肌が立った。この言葉がこのツアーで歌われたすべての歌に当てはまっていると気付いたからだ。名作映画みたいな鮮やかな結末。

だがまだ終わりではない。アンコールは“おまけ”ではない。本編の物語をさらに飛翔させていく。『木綿のハンカチーフ』は1975年の太田裕美のヒット曲であり、ASKAの東日本大震災復興支援カバーアルバム『「僕にできること」いま歌うシリーズ 』収録曲でもある。男性側と女性側の歌詞が交互に入る構成になっているのだが、ASKAが歌うことで、男性側の視点がより浮き彫りになっていく。恋人の心変わりを悲しむ歌でありつつも、心変わりしてしまった側の悲しみや無念の思いも染みてくる。時は移ろっていく。形あるものはいつかなくなってしまう。人生に別れはつきものだ。音楽はそうした現実と対峙し、受け入れていく上での頼もしい味方となってくれる。孤独にさいなまされ、悲しみに打ちひしがれているのが自分ひとりだけでないことを気付かせてくれるのも音楽である。『UNI-VERSE』の“誰も彼もみんなみんなそうだ”というスタート地点から、『同じ時代を』の“同じ時代を歩いて行く僕たちさ”というゴール地点へとこの“ROCKET”ツアーのステージは鮮やかな円を描くように繋がっていく。これは過去・現在・未来、そして内なる宇宙へと向かう音楽の旅。しかもおみやげ付き。かつてあった輝きを現在へと持ち帰ってくる再生の旅でもあるだろう。

«セットリスト»

  • UNI-VERSE
  • SCRAMBLE
  • 朝をありがとう
  • Girl
  • 歌の中には不自由がない
  • birth
  • Far Away
  • はるかな国から
  • you & me
  • はじまりはいつも雨
  • 冬の夜
  • 水ゆるく流れ
  • けれど空は青 ~close friend~
  • Kicks Street
  • LOVE SONG
  • L&R
  • バーガーショップで逢いましょう
  • 晴天を誉めるなら夕暮れを待て
  • 僕の来た道
  • いろんな人が歌ってきたように
  • 木綿のハンカチーフ
  • 同じ時代を

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